当時30歳、嫁さんと子供は借金が理由で別居中だった(と思う)。
おそらくこんな事態になる前に何度も警告や通達が来ていたのだとおもうが、あまりにもそんな郵便物が毎日何通も来るので封も切らずにほったらかしにしていたのだと思う。
電話も止まっているのでこちらからすればいきなりやって来たように感じる。先方からすれば督促もまったく無視で何の連絡も来ない最悪の債務者だろう。当時携帯電話など世の中に普及してなかった。私はかろうじてポケベルを持っていたけど…
突然初老の2人組のおっさんが申し訳なさそうな顔してやってきた。書類を見せられて説明を受ける。
簡単に言うと「債務が滞ってるため財産を差し押さえる」という事だった。
この2人組は裁判所から来たと言うようなことを言ってたように思う。心の中では軽く舌打ちしながらとりあえずその連中を部屋に入れる。
まず用意してきた用紙に差し押さえる家財道具のリストを作ってから、その家具や電化製品に赤いシールを貼っていく。
目立たないように裏側や後側に貼ってくれた。電話機などは底に貼った。
外見からはまったく見えない。
最後にまた差し押さえた物のリストを見せられて説明を受ける。
今日からこの家財道具の所有権は私ではなく裁判所に移るそうだ。勝手に使ってはいけないそうだ。債務が支払われると自動的にこの差し押さえは解除されるらしい。
この気の弱そうな2人組は小さな声で淡々と説明して帰って行った。歳を取って嫌な仕事を押し付けられて仕方なくやってるように見えた。
なんだか拍子抜けした。これだけのことで払わなくていいなら大歓迎だ。このまま放っておいて持って行ってもらおうかなどと考える。
もちろん2人組が帰ってしまった後、気にせず全部普通に自分の物として使っていた。約束どおりのお金が支払えない者が所有権がないからと言われたくらいで怯むわけがない。別に生活に変化は無かった。
その後もその債務は放っておいたが債権者の信販会社は家財道具の価値があまりにも低かったのかそのまま何もしに来なかった。
借りた者勝ち…これを実感した。
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